こんにちは
SSでプログラマーをしてる梅原壮太です。
今回は、価値観を変えるビジネス書籍紹介:第2回は「シン・二ホン」です。
本書はビジネス書大賞2020で特別賞に受賞された作品になります。
<審査員コメント>
・徹底したデータ主義でビジネスパーソンに、日本の「いまここにある危機」は何かを示してくれる。COVID-19で先が見えないいまだからこそ、未来を考える方法を学ぶために読むべきと言える。・コロナ禍によりさらに不透明さが増した現在をビジネスパーソンが生き抜くにあたり、世の中の動きを的確に捉える見識を持ち、自分たちの未来を、自ら描き、変えてゆくことのできるように、豊富なファクトに基づいていて、示唆に富んでいる。
・日本という国を改めて考えるきっかけになった。
根性論でも数字の羅列でもなく、冷静かつ熱意を込めて日本を語っている。
新しいカテゴリのビジネス書と言えるであろう。
私は本書を読んで、コロナウイルスにより様々な価値観が変化する中で2021年の日本に必要な考え方を熱く語っている本だと思いました。非常に熱いメッセージを文字越しに感じましたので、要約として紹介させていただきます。
では、さっそく内容を深堀していきましょう!
本書の結論
本書の結論から申し上げますと
「現状、日本は世界に負けている、しかし日本は2020年からが勝負だ!」
という内容です。
「シン・二ホン」という超大作を大きく3つのパートに分けてざっくりと説明していきます。
2030年までに起こるであろう世界の変革
これからはAI×データで課題解決する時代になる!と著者の安宅さんは予言しています。
現状、世界市場はGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の5社が席巻しています。GAFAMはインターネットを基盤にしてプラットフォームビジネスを行っています。プラットフォームビジネスとは、サービスの提供者と顧客を結ぶサービスです。
そしてここからが問題です。
GAFAMはそれぞれ主要なITビジネスで得たデータを他のサービスへと応用しています。インターネットを介して私たちの検索履歴や行動パターンをデータとして保管(ビッグデータ)、そしてAI(人工知能)と組み合わせることでさまざまな他のサービスを生むという時代の流れになっています。とはいえGAFAMの急成長は10年前には予想できなかったことです。
産業が革新的な変化を遂げる「イノベーションの波」はどうなっているかというと、2020年の現在、第一波がすでに終わりかけているとのことです。
イノベーションの波
ここで少し遠回りですが、歴史を振り返り産業革命についておさらいしましょう。
イノベーションの波をつかめると思います。
時代 | ポイント | |
---|---|---|
第一次産業革命 | 18世紀 | 石炭と機械化 |
第二次産業革命 | 19世紀~20世紀 | 石油と大量生産化 |
第三次産業革命 | 1970年代 | コンピュータによる単純作業の自動化 |
第四次産業革命 | 2010年代~ | AI・IoT・ビッグデータ・デジタル化 |
第一次産業革命
世界史でかすかに勉強した記憶がある「産業革命」です。
18世紀後半、熱をエネルギーに変え、機械を蒸気動力で動かし始めたことがきっかけです。
蒸気動力で機関車や蒸気船が動くことで、短時間で長距離を移動できるようになり、暮らしに大きな変化が起きました。ポイントは、「人力から機械化」したことになります。
第二次産業革命
19世紀に電力を使用し、工場でライン製造が行われたことから始まります。この方法を自動車生産に持ち込み、応用しました。作業員はベルトコンベアー上で担当作業だけを行っているため、短時間かつ低コストで多くのものが生産できるようになりました。
ポイントは、「重工業の大量生産」です。
第三次産業革命
1970年代にコンピューターが使われるようになり、部分的な自動化が行われたことから始まります。コンピューターが導入されて以来、生産工程全体を人の手を借りずに自動化できるようになりました。ポイントは「無人化」です。
第四次産業革命
現在、第四次産業革命(インダストリー4.0″とも呼ばれます)の真っただ中にいます。
ポイントは「ビッグデータ×AI」ですが、起因となるのは一人が1台以上のコンピューター(スマートフォン)を所持するようになったことだといわれています。
デバイスがあらゆる場所にいきわたり、プラットフォーム(ソフトウェアやデータベース)でデータを集める仕組みができれば「人間の行動」をデータとして把握することができるということです。
第一次産業革命の資源になったのは「石炭や石油による蒸気動力」です。これまでは石油による熱エネルギーによって企業が価値を生む時代でした。「物質という有機物」が絡むのが最大の課題だったと思います。しかし、これからは「データという無機質な資源」がテクノロジーの進歩を後押ししていきます。そして「データ」には限界がありませんので、これからは指数関数的に急速に変化する時代に突入していくと述べられています。
日本の現状
さて、時代の潮流がわかったところで安宅さんは現状の日本を三重苦だと言及しています。
- プラットフォームがなくデータの数が足りていない
- インフラが整っていない
- データを正確に扱えるエンジニアが足りない
まず一つ目のデータ数が足りていないという部分ですが、SNSやEコマース、検索エンジンといった巨大プラットフォームは、Google、Amazon、Facebookに占領されています。次にインフラ(処理基盤)、これは通信代と電気代の料金が他国と比べて高すぎて、データを扱う際に多額のコストが生じているということです。またエンジニアに関しても、数ではアメリカ・中国・インドに負けていますし、自然言語処理や機械学習といったビッグデータを扱える人財も不足しているといいます。
安宅さんは現状の日本を「黒船来航」と例えています。非常に秀逸な表現です。
産業革命の波に乗れず、鎖国していたらペリーが乗っている黒船が突然やって来たという意味です。もう刀では太刀打ちできません。
日本はこれからどう戦ったらいいのか
さて、「シン・二ホン」はここで悲観するのではなく、これからの日本の対策方法まで言及してくれています。その際に国家の成長とは3つのフェーズに分けられるという前提のもと、話を展開されています。まずはその3つのフェーズを以下に記します。
- エネルギーを発見し、使い方を模索する時代(蒸気機関車を発明する)
- エネルギーを活用していく時代(線路を引いて実際に電車を走らせる)
- 産業がシステム化が生んでいく時代(山手線のように複雑に電車が走っている)
日本は、トンネルを掘り線路を効率的かつ安全に建設することや電車から新幹線を発明することなどシステム統括したり、アップグレードすることが得意!フェーズ1はダメダメだが、フェーズ2,3では他国を圧倒しているという特徴があると安宅さんは述べています。
国民性が0から1を生み出すのは苦手だが、1から10にするのは得意ということですかね。
本書が出版された2020年はというと「フェーズ1の終わり」くらいだそうです。現状、世界に圧倒的に遅れているのは事実ですが、これからが日本の強みを活かせるフェーズ2・3に入るそうです。
安宅さんの言葉を借りれば、これからの日本の勝機は「出口産業」と「妄想力」の2点です。
出口産業
プラットフォームはモノにつなげシステムを最適化することで真価を発揮するといいます。例えばコンビニエンスストアやガソリンスタンド、病院は誰もが使える場所しており、データの宝庫です。
こういった施設とプラットフォームが合わされば、データを集め、無人でありながらも快適な生活が可能になるでしょう。※Amazon Goのようなものをイメージしてください。
https://agenda-note.com/retail/detail/id=3358
妄想力
幼いころからドラえもんを見ているからか妄想力が強い国民性だといいます。「漫画・アニメ」文化は日本の強みということですね。確かにゴム人間の腕が伸びるとか忍者が影分身するというのは現実的ではないがあったら面白いという感性をくすぐりますもんね。デジタル社会ではそういった非現実的なことが可能になり、日本独自のサービス体験を提供できる可能性があります。
これからは日本の魅力をどんどん発信していきましょう!という本でした。
あとがき
ITベンチャー企業のプログラマーができること
さて本書の要点、世界の潮流⇒日本の現状⇒これからの日本という著者からの熱いメッセージは受け取りましたが、安宅さんは視点を日々の業務に反映するのは難しい、いや無理です。
現在の僕個人ができることは、アメリカや中国が作ったプラットフォームを積極的に使うことです。日ごろからGoogleやZoom、Teams、ロボット掃除機やスマートスピーカーといったものを積極的に使うようにしています。プラットフォームを発明するのは無理でも、このソフトウェアをこんな使い方したら面白そう!とかこういった企画がYouTubeではウケるんだ、など非常に勉強になります。
これからもどんどん新しい技術や製品が出てくると思いますが、積極的に吸収してわずかながらでも自分の成長につなげていきたいと思います。
安宅さんについて
最後に著者の紹介となりますが、現在yahooのCSO(戦略責任者)と慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)で教授をしていたりするスーパーマンです。かつては東京大学で博士号を取得した後、マッキンゼーでコンサルタントをされていたこともあるらしく、非常に優秀な方です。TED動画があるので、「シン・二ホン」を一から読むのが大変だという人はまずはこちらの動画で概要をつかむといいと思います。
ここまで長文読んでいただきありがとうございました。
もしよければ第1回もご覧ください!あなたは天才ですか、凡人ですか?
安宅さんの名著をぜひ読んでみてください。